LEESDESIGN 文儀設計 日本語サイト

台湾でお店の設計や内装工事はお気軽にLEESDESIGNまでどうぞ! ご連絡は、そのまま日本語で大丈夫です。

日本語が通じる?通じない?台湾設計会社と安心して打ち合わせする方法

「台湾で店舗を出したいけれど、言葉が通じるか不安…」

そんな悩みを抱える日本企業は少なくありません。

設計や内装工事の打ち合わせでは、専門用語が飛び交い、ちょっとした誤解が大きなトラブルにつながることも。

しかしご安心ください。

実は、言葉の壁は工夫次第で十分に乗り越えることができます。

本記事では、台湾の設計会社における日本語対応の現実と、言語が通じなくても安心して打ち合わせを進めるための具体的な方法を、成功事例と失敗事例を交えて詳しくご紹介します。

台湾出店を成功させるための第一歩は、「正しく伝える」「誤解を防ぐ」「信頼を築く」こと。

本記事を読めば、あなたも台湾の設計会社と自信を持ってプロジェクトを進められるようになるはずです。

台湾設計会社で日本語が通じる割合と現実

台湾で出店を検討する日本企業が最初に気にするのは、「現地の設計会社と日本語で意思疎通できるのか?」という点でしょう。

実際、打ち合わせがうまく進まなければ、設計意図が正しく伝わらず、後々の工事や仕上がりに大きな影響を及ぼします。

特に初めて台湾進出を考えている企業にとって、この言語の壁は心理的ハードルのひとつです。

そこで、台湾の設計会社における日本語対応の実情を詳しく見ていきましょう。

日本語対応ができる会社は全体のどれくらい?

台湾の設計会社や内装会社の中で、「日本語での打ち合わせが可能」と公言している企業は全体の約2割程度にとどまります。

大都市である台北では比較的多いものの、台中や高雄ではその割合はさらに低くなります。

しかも「日本語対応可能」と記載があっても、実際にスムーズな日本語で専門的な会話ができるとは限りません。

多くの場合、日本語が話せるスタッフは営業担当やコーディネーターに限られ、設計者本人が日本語を使えるケースはまれです。

「日本語可能」と言ってもレベルは様々

一口に「日本語ができます」と言っても、そのレベルには大きな幅があります。

日常会話は問題ないが、建築や設計の専門用語となると理解が不十分な場合も多く、図面や仕様に関する説明で食い違いが生じやすいのです。

たとえば「納まり」や「役物」といった日本独自の施工表現は、直訳しても意味が伝わりません。

逆に、日本語検定で高い級を持っていても、現場での専門的なやり取りになると理解が追いつかないことも珍しくありません。

したがって「日本語対応可能」という表記だけを信用せず、必ず過去の実績や打ち合わせ時の会話でレベルを見極める必要があります。

設計士本人が話す場合と通訳がつく場合の違い

台湾の設計会社では、大きく分けて二つのパターンがあります。

ひとつは、設計士本人がある程度日本語を理解して話すケース。

もうひとつは、打ち合わせに通訳スタッフが同席するケースです。

前者の場合、意思疎通はスムーズですが、日本語に自信があるがゆえに微妙なニュアンスの確認を省略してしまい、後から食い違いが生じるリスクがあります。

後者の場合、逐次通訳を介すため時間はかかりますが、誤解が少なくなる傾向があります。

ただし、通訳者が建築知識を持っていないと、専門用語の誤訳によってかえって混乱を招くこともあります。

このため、通訳付きであっても「建築や設計に関する最低限の知識を持つ人物であるか」を必ず確認しておくべきです。

日本語対応スタッフにありがちな課題

台湾の設計会社に所属する日本語対応スタッフの多くは、日本留学や日系企業での勤務経験を持っています。

しかし、彼らが必ずしも「設計や工事の実務に詳しい」とは限りません。

例えば、打ち合わせでは日本語で丁寧に説明してくれても、実際に現場で職人に伝える段階で細部が抜け落ちてしまい、図面と施工内容に差異が生じることがあります。

また、設計段階で日本企業が重視する「細部までの正確さ」に慣れていないため、細かい寸法や仕上げの表現を軽視する傾向も見られます。

結果として「言葉は通じているはずなのに、完成した空間がイメージと違う」という事態が発生しがちです。

信頼できる「日本語対応」の見極め方

では、日本企業の担当者はどのようにして信頼できる日本語対応スタッフを見極めればよいのでしょうか。

ひとつのポイントは、初回の打ち合わせ時にあえて細かい質問を投げかけてみることです。

例えば「壁と床の取り合いの納まりはどう考えていますか?」など、専門的な表現を含む質問をしたときに、的確に答えられるかどうかで実力が見えてきます。

また、過去に日本企業とどの程度取引してきたかを確認するのも重要です。

実績が豊富な会社であれば、言語だけでなく、日本企業が求めるクオリティや打ち合わせの進め方にも慣れていることが多いです。

さらに、議事録や提案資料を日本語で作成してもらえるかどうかもチェックポイントのひとつ。

書面に残せる能力があるスタッフは、現場での伝達も正確な傾向があります。


ここまで見てきたように、「日本語が通じるかどうか」という問題は単に会話が成立するか否かだけでなく、専門知識の理解度や現場への伝達力とも密接に関わっています。

表面的に「日本語対応可能」という言葉に安心せず、実際の対応力をしっかりと見極めることこそが、日本企業が台湾で安心して店舗づくりを進めるための第一歩です。


日本語が通じなくても安心できる打ち合わせの進め方

台湾での出店を進める中で、多くの日本企業が直面するのが「日本語が通じない相手との打ち合わせ」です。

設計会社や内装工事会社の中には日本語が堪能なスタッフがいない場合も少なくありません。

しかし、だからといって計画が進められないわけではありません。

むしろ、準備と工夫次第で、言語の壁を超えて十分に安心できる打ち合わせが可能です。

本章では、そのための具体的な方法を解説していきます。

事前に準備しておくべき資料と翻訳

台湾の設計会社と打ち合わせを行う際、最も重要なのは「事前準備」です。

特に言語が十分に通じない場合、口頭での説明に頼るのはリスクが高く、誤解や認識のズレにつながります。

そこで有効なのが、日本語の資料を中国語に翻訳しておくことです。

ここで言う資料には、大きく分けて3つの種類があります。

1つ目は コンセプト資料

店舗のブランドイメージやターゲット層、デザインコンセプトなどを簡潔にまとめたもので、写真やイラストを多用すると視覚的に伝わりやすくなります。

2つ目は 図面・レイアウト案

平面図や立面図など、空間の構成を理解するための基本的な資料です。

寸法や什器の配置は国が変わっても共通の情報源になるため、できる限り正確に準備しましょう。

3つ目は 仕様書や仕上げ表

使用したい素材や色、照明計画など、細部にわたる仕様を記した資料です。

翻訳にあたっては、専門用語の誤訳を防ぐため、あらかじめ「用語リスト」を作成して渡すと効果的です。

特におすすめなのは、日中併記の資料を作成することです。

日本語と中国語を並記することで、双方が内容を確認でき、万一翻訳に誤りがあっても相互に照合できます。

また、オンライン翻訳に頼りすぎず、できれば建築分野に詳しい翻訳者に依頼するのが理想的です。

こうした準備を整えることで、打ち合わせは格段にスムーズになります。


写真・図面・イメージ集の活用術

言語の壁を乗り越える最も強力なツールが「視覚資料」です。

建築やデザインの世界では、言葉よりも写真や図面の方がイメージを共有しやすい場合が多々あります。

例えば、壁の仕上げを「マットな白」と説明しても、人によって「マット」の解釈は微妙に異なります。

しかし、実際のサンプル写真を見せれば、一目で伝わります。

同様に、家具や什器のデザイン、照明の配置なども写真を添えることで、言葉に頼らずに意思疎通が可能です。

特に有効なのが イメージボード です。

希望する空間の雰囲気や色使いをコラージュのようにまとめたもので、素材のサンプル写真やカラーコードを添えると、台湾の設計士や職人も具体的に理解しやすくなります。

さらに、3Dパースを用意するのも効果的です。

図面だけではイメージしづらい立体感や光の入り方も、パースがあれば直感的に理解できます。

台湾の設計会社の多くはスピード重視の傾向があり、詳細な資料を自ら準備することは少ないため、日本側から積極的に写真やイメージ資料を提示することが成功の鍵となります。


台湾人スタッフに伝わりやすい日本語表現とは

日本語を使えるスタッフが同席している場合でも、「伝わる日本語」と「伝わりにくい日本語」が存在します。

台湾人スタッフにとって理解しやすいのは、シンプルで具体的な表現です。

例えば、「もう少し落ち着いた雰囲気で」といった抽象的な表現は誤解を招きやすいですが、「照明の明るさを50%程度に落として、壁の色をグレーにしたい」と具体的に伝えれば理解度は大きく上がります。

また、日本特有の曖昧表現は避けた方が無難です。

「できれば」「いい感じに」「なるべく」などは、解釈が人によって変わりやすく、施工段階で食い違いが生じやすい言葉です。

その代わりに、数字や写真、サンプルを添えて具体性を持たせることが大切です。

加えて、専門用語を多用するのも避けた方が良いでしょう。

日本では当たり前の言葉でも、台湾にはそのまま存在しない概念があるからです。

たとえば「小口処理」「役物タイル」といった言葉はそのままでは伝わらないため、写真やスケッチを併用するのが有効です。


打ち合わせの議事録を確実に残すコツ

台湾での打ち合わせでは、議事録を残すことが欠かせません。

言語の壁がある中で、口頭のやり取りだけに頼ると「言った・言わない」のトラブルが頻発します。

効果的なのは、打ち合わせ終了後に 日本語と中国語の併記で議事録をまとめること です。

双方が内容を確認できるため、誤解を未然に防げます。

もし中国語での作成が難しい場合でも、少なくとも日本語で議事録を残し、相手に確認してもらう習慣をつけましょう。

議事録には、単なる決定事項だけでなく「保留中の項目」「次回までの宿題」も必ず記載しておくことが大切です。

これにより、進行中の案件を双方で明確に把握できます。

さらに、メールではなくPDFなどで保存することで、誰がいつ確認したかを記録として残せます。


翻訳アプリと人力通訳の効果的な併用方法

近年、翻訳アプリの精度は飛躍的に向上しており、打ち合わせの補助として非常に有効です。

しかし、アプリだけに頼るのは危険です。

建築や内装の専門用語は一般的な翻訳に対応していない場合が多く、誤訳が生じやすいからです。

そのため、理想的なのは 人力通訳と翻訳アプリの併用 です。

日常的なやり取りや簡単な確認はアプリで済ませ、重要な議題や仕様に関する部分は人力通訳に頼るのが安心です。

特に、契約書や仕様書の確認時にはアプリ翻訳は避け、必ず人の目を通すべきです。

また、オンライン会議では同時通訳ツールを活用する方法もあります。

リアルタイムで双方の言語に変換してくれるため、時間短縮につながります。

ただし、ツールを使用する場合も、後で必ず議事録を残すことを忘れないようにしましょう。


台湾特有の設計用語と表現のギャップ

日本と台湾では、建築や内装の基本的な考え方は似ていますが、設計や現場で使われる用語や表現には大きな違いがあります。

特に、日本語と中国語で意味が微妙にズレる単語や、日本では常識のように使われている言葉が台湾ではまったく通じないケースは珍しくありません。

ここでは、そうしたギャップを具体的に解説していきます。


日本語と中国語で意味がズレやすい単語

台湾で打ち合わせをしていると、日本語の単語をそのまま中国語に直訳した結果、意図と異なる理解をされることがよくあります。

たとえば「清掃仕上げ」という言葉。

日本では「工事完了後に現場を掃除し、引き渡し可能な状態に整えること」を指しますが、中国語で「清掃(清潔)」と言うと単に「掃除すること」と受け取られ、引き渡しレベルまで整えるというニュアンスは含まれません。

また、「監督」という言葉も誤解を招きやすい単語のひとつです。

日本では現場監督といえば工程や品質を総合的に管理する責任者を意味しますが、台湾ではそのような役割を持つ人材は存在せず、「監督」と訳しても伝わらないのです。

代わりに「工地主任」や「工程管理人員」と説明する必要があります。

さらに「耐火仕様」という単語も要注意です。

日本でいう耐火は建築基準法で厳密に規定されていますが、台湾では「耐火」と言っても同等の基準を満たす素材が手に入らない場合が多いのです。

したがって、単に「耐火」と伝えるのではなく、どの程度の性能が必要なのか、数値や国際基準を添えて説明する必要があります。


「仕上げ」「納まり」など現場特有の言葉の違い

日本の現場では当たり前に使われる「仕上げ」や「納まり」という言葉も、台湾では直訳しても理解されにくい用語です。

例えば「納まり」。

日本の現場では、部材と部材がどのように接合され、どのような見た目になるかを細かく指定する文化があります。

しかし、台湾では細かい納まりにこだわる習慣が少なく、職人任せになることが多いのです。

日本語で「この部分の納まりをきれいにしてほしい」と伝えても、「きれい」の基準が相手とズレているため、仕上がりに差が出やすいのです。

「仕上げ」に関しても同様です。

日本では塗装やクロス貼りの仕上げ感を重要視し、「マット」「セミグロス」「鏡面仕上げ」といった微妙な質感の違いを明確に区別します。

しかし台湾では、「白」「ツヤあり」「ツヤなし」程度の表現で済まされることが多いため、日本側の期待と実際の仕上がりにギャップが生じがちです。

特に「仕上げ」は日本時代からの日本語が中国語ではなく台湾語としてこの業界にしっかり残っていて、日本語で「仕上げ」というと、そのまま台湾の大工さんたちの心に響き、ニコッと笑って頷いてくれますので、日本人からしたら「伝わった」と思ってしまいます。

「仕上げ」(日本語でも台湾語でも発音は「しあげ」)という言葉の響きは、大きな概念では日本語も台湾語も変わらないです。

ただし、この「仕上げ」という言葉を現場で使った時に、その日本人が期待する細かいイメージと台湾人のイメージする細かい内容は、実は違うのです。

こういう、台湾の人たちは日本語を知ってるから伝わっているだろう、台湾人の知っている日本語は日本人と同じように感じているだろうという期待が一番のリスクです。

したがって、日本から台湾に発注する際には、仕上げや納まりに関する要望を必ず写真やスケッチを添えて具体的に伝える必要があります。


台湾でよく使われるカタカナ用語の落とし穴

台湾の設計会社や現場では、日本語由来のカタカナ用語が使われていることがありますが、その意味が日本と違うということも珍しくありません。

たとえば「パーテーション」。

日本では間仕切り全般を指しますが、台湾では主にオフィスで使う簡易間仕切りを意味することが多いです。

そのため、店舗での壁を「パーテーション」と依頼すると、強度の低い仮設壁が設置されてしまうこともあります。

また、「クロス」という言葉も要注意。

日本でクロスといえば壁紙の総称ですが、台湾では「クロス」と言っても通じず、「壁紙(壁布)」と明確に伝える必要があります。

さらに「コンセント」も混乱しやすい単語の一つ。

日本では壁に設置された差し込み口を指しますが、台湾では「插座」と呼ばれており、「コンセント」と言うと理解されない場合がほとんどです。

このように、カタカナ日本語は英語じゃなくて日本語ですので、日本で使っている意味では伝わらないどころか、むしろ誤解を招く可能性があるため、注意が必要です。


見積書や仕様書で混乱しやすい言葉

台湾の設計会社から提出される見積書や仕様書を見て、日本企業の担当者が戸惑うケースは多々あります。

たとえば「含む」「含まない」の表記。

日本の見積書では明確に区分されますが、台湾では「基本工事に含む」という表現が曖昧で、後から追加請求されるケースがあります。

また、数量単位の違いにも注意が必要です。

面積は、日本は「㎡」で表記されるのが一般的ですが、台湾では「坪」を使います。

さらに、仕様書に記載される素材名も注意が必要です。


誤解を避けるための用語リスト作成のすすめ

こうした言葉のギャップを防ぐために有効なのが、「用語リスト」の作成です。

よく使う専門用語を日中併記で一覧化し、打ち合わせや資料作成の際に共有することで、誤解を大幅に減らすことができます。

例えば:

日本語中国語補足説明
クロス壁布壁紙のこと
コンセント插座電源差し込み口
納まり收口部材の接合や仕上げ方
役物タイル特殊磚コーナーや端部専用のタイル
耐火防火日本の基準とは異なる場合あり

このようなリストを最初に準備しておけば、設計段階から施工まで、共通認識を持って進めることができます。


コミュニケーションエラーが招いた実際のトラブル事例

台湾での店舗づくりにおいて、日本企業が直面するトラブルの多くは、実は「技術」や「品質」そのものよりも、「コミュニケーションエラー」に起因しています。

つまり、言語や文化の違いからくる誤解や勘違いが原因で、施工ミスやコスト増、工期の遅延に発展してしまうのです。

ここでは、実際に起こった事例をもとに、その背景と教訓を解説します。


日本語対応スタッフが誤訳してしまったケース

ある日本のアパレル企業が台北に旗艦店を出店した際、日本語を話せる台湾人スタッフを窓口にして打ち合わせを進めました。

そのスタッフは日常会話に支障はありませんでしたが、建築の専門知識はほとんどありませんでした。

問題が起きたのは、照明計画の段階です。

日本側が「全体を均一に照らすベースライトは、温白色で3000K前後にしてください」と依頼したところ、スタッフは「温かい光(暖色系)」と解釈し、設計士には2700Kの電球色を伝えてしまったのです。

結果として、完成した店内は日本側が想定していた明るい雰囲気ではなく、落ち着きすぎて暗い印象になってしまいました。

最終的に追加工事で照明を入れ替える羽目になり、コストと工期が余計にかかってしまいました。

このケースの教訓は、「専門知識のない通訳者に任せきりにしない」という点です。

数値や規格など客観的に判断できる表現を用い、可能ならば図面やサンプルを添えることが不可欠です。


設計図面の読み違いから工事がやり直しになった例

別のケースでは、日本の飲食店が台湾で新店舗を開いた際に起きたトラブルです。

日本側が提出した図面に「カウンター高さ950mm」と記載していました。

しかし台湾の施工チームは「天板までの高さ」ではなく、「床からカウンター下端までの高さ」と解釈してしまったのです。

その結果、出来上がったカウンターは日本人スタッフが使うには高すぎるものになり、接客業務に支障が出ました。

結局、工事をやり直すことになり、大幅な工期延長と追加費用が発生しました。

この背景には、「図面の記載方法の文化差」があります。

日本では高さ寸法を天板や仕上げ面で表すことが多いのに対し、台湾では下地や骨組みの位置を基準にすることがあるため、図面の読み方が異なるのです。

解決策としては、寸法だけでなく「どこからどこまでの寸法か」を図面上に明示することが大切です。


色指定が誤解されて仕上がりが大きく異なった話

日本の美容院チェーンが台中に店舗を出した際、内装の壁色を「白に近いライトグレー」と指定しました。

ところが、完成してみると壁は日本側の想定よりかなり濃いグレーでした。

原因は、台湾の塗装業者が使ったカラーチャートが日本のものと異なっていたことです。

「ライトグレー」といっても、基準となる色見本が異なれば解釈は大きくズレます。

さらに台湾では塗料のブランドが限られており、日本で一般的に使われる色番号が存在しないことも珍しくありません。

この問題を防ぐには、必ず具体的な色番号を指定し、可能ならサンプルを取り寄せて現物確認することです。

さらに、施工前に試し塗りを依頼し、現場で実際の色味を確認することが理想です。

色に関するトラブルは特に多いため、慎重さが求められます。


工期延長につながった小さな言語のズレ

台南でカフェを開いた日本企業のケースでは、工期が1か月以上遅れました。

その原因は、大きなトラブルではなく、小さな言語のズレの積み重ねでした。

例えば、日本側が「この什器は来週までに設置してください」と依頼したところ、台湾側は「来週中に材料を発注する」と解釈していました。

さらに「図面の修正を急いでください」という指示も、台湾側は「次回の打ち合わせまでに間に合わせればよい」と受け取っていたのです。

こうした「納期感覚の違い」が積み重なり、気が付けば予定より大幅に遅れてしまいました。

台湾では「なるべく早く」という表現は非常に曖昧で、日本人が考える「早い」とはズレていることが多いのです。

したがって、期日を明確に数字で示し、進捗を小まめに確認することが重要です。


成功に転じた「通訳の工夫」事例

一方で、工夫次第でコミュニケーションエラーを未然に防ぎ、成功につなげた例もあります。

ある日本のベーカリー企業は、台湾出店の際に「建築知識を持つバイリンガル通訳」を専属で採用しました。

この通訳者は設計用語に精通しており、打ち合わせのたびに専門用語を日本語と中国語で用語リスト化し、双方に配布しました。

また、議事録を必ず日中併記で作成し、双方が確認サインをするルールを徹底しました。

その結果、誤解による修正工事がほとんど発生せず、予定通りに開業できました。

この事例が示すのは、「適切な通訳と記録の徹底が信頼関係を築く最大の武器」ということです。

単なる言語の翻訳にとどまらず、専門知識を持ち、双方の意図を正しく橋渡しできる人材の存在は極めて重要です。


日本企業が台湾設計会社と良好な関係を築くために

台湾に出店する日本企業にとって、設計会社や内装会社との関係性は成功の鍵を握ります。

技術力やデザイン力はもちろん重要ですが、それ以上に「信頼できるパートナーとして共に歩んでいけるかどうか」が成否を大きく分けるのです。

本章では、日本企業が台湾の設計会社と良好な関係を築くために欠かせない具体的なポイントを紹介します。


「言語力」だけで選ばないパートナー選び

台湾で設計会社を選ぶ際、日本企業が最初に重視するのは「日本語が通じるかどうか」です。

しかし、これは重要ではあるものの、必ずしも最優先事項にすべきではありません。

なぜなら、流暢な日本語を話せても、施工管理の経験が不足していれば、結果的に大きなトラブルにつながるからです。

実際、過去にあった事例では、日本語対応が完璧な設計会社に依頼したものの、現場管理が甘く、仕上がりの品質が低下してしまったケースがあります。

反対に、日本語がほとんど通じなくても、現場監督と設計士がしっかり連携し、図面や議事録で細かく共有を行った結果、非常に高い完成度を実現した例もあります。

つまり、「言語力」よりも「実務能力」と「誠実さ」を重視することが大切です。

日本語が話せることは安心材料にはなりますが、それだけで選んでしまうと本質を見失いかねません。

見積もりや過去の実績を比較する際には、施工後のアフターフォロー体制やトラブル時の対応力も必ずチェックしましょう。


定期的なオンライン会議で理解を深める

台湾の設計会社と良好な関係を築くためには、打ち合わせの頻度と透明性が重要です。

特に、工事が進行している段階では、週に一度はオンライン会議を設け、進捗を共有することをおすすめします。

ここで重要なのは「ただ進捗を報告するだけでなく、双方の疑問点をその場で解消する」ことです。

台湾では、細かいことを後回しにする傾向があり、日本企業が思っているよりも曖昧なまま作業が進んでしまうことがあります。

オンライン会議でこまめに確認することで、誤解が積み重なるのを防げます。

また、会議内容は必ず議事録として残し、日中併記で共有しましょう。

オンライン会議の録画を残すのも有効です。

後から「言った・言わない」の問題が発生した際、映像と議事録があるだけで大きな安心材料となります。


日本語が通じない相手とも信頼関係を築く方法

もし相手が日本語を話せない場合でも、信頼関係を築くことは十分可能です。

むしろ、言葉が通じないからこそ「誠意ある対応」が相手に強く伝わります。

具体的には、次のような工夫が効果的です。

  • 視覚資料を積極的に使う
    写真やイメージパースを使って説明することで、言語に頼らず意思疎通が可能になります。
  • 約束を必ず守る
    たとえ小さなことでも約束を守る姿勢を見せると、台湾側からの信頼は一気に高まります。
  • 感謝の言葉を忘れない
    台湾では人間関係を非常に重視する文化があり、ちょっとした感謝や労いの言葉が大きな効果を持ちます。
  • 相手の文化を尊重する
    例えば、打ち合わせで「風水」を話題にされたら無視せず、「ぜひ意見を聞かせてください」と前向きに受け止めると、相手は喜んでくれます。

こうした姿勢を積み重ねることで、言葉の壁を越えた信頼関係を築くことができます。


契約時に盛り込むべき言語対応の条項

設計会社との契約を結ぶ際、見落とされがちなのが「言語対応に関する条項」です。

日本語が通じない場合、仕様書や図面の解釈をめぐってトラブルが起きやすいため、あらかじめ契約書に次のような内容を盛り込むと安心です。

  • 契約書や仕様書は 中国語と日本語の併記 で作成する
  • 打ち合わせ内容は議事録に残し、双方が確認サインをする
  • トラブル発生時には 双方合意の翻訳者を通じて確認する
  • 最終的な判断基準となる図面や資料を 言語と共に添付 する

これらを契約に明記することで、万一のトラブル時にも「どちらの解釈が正しいか」を判断しやすくなります。


台湾で安心して出店を進めるための心構え

最後に、日本企業が台湾の設計会社と良好な関係を築くうえで欠かせないのは「心構え」です。

日本式の常識をそのまま押し付けるのではなく、「違いを前提に調整する」という姿勢が必要です。

台湾では、日本ほど細部にこだわらない代わりに、スピード感を持って工事が進みます。

逆に、日本のように一つ一つ丁寧に仕上げを確認していると、現地スタッフから「なぜこんなに時間をかけるのか」と不思議がられることもあります。

重要なのは、「どこまでが譲れないポイントか」を明確にし、それ以外は現地のやり方を尊重することです。

また、信頼関係を築くには「現場に足を運ぶ」ことが一番です。

たとえ月に数日でも日本から訪問し、スタッフと顔を合わせて話すだけで、台湾側のモチベーションは大きく変わります。


まとめ

台湾での店舗づくりにおいて、日本企業が直面する最大の課題の一つが「言語の壁」です。

しかし、本記事で見てきたように、適切な準備と工夫を重ねれば、たとえ日本語が十分に通じなくても安心して出店計画を進めることが可能です。

第1章では、日本語対応が可能な設計会社は全体のごく一部であることを確認しました。

単に「日本語が通じる」というだけでは不十分で、専門知識の有無や実際の伝達力を見極める必要があります。

第2章では、日本語が通じなくても安心できる打ち合わせ方法として、翻訳資料やイメージボードの活用、具体的な表現の工夫、議事録の徹底が有効であることを紹介しました。

第3章では、日本語と中国語で意味がズレやすい用語や、台湾特有の表現について触れ、用語リストの作成がトラブル防止に役立つことを解説しました。

第4章では、実際に起こった誤訳や図面解釈の違いによるトラブル事例を紹介し、誤解を避けるための具体策を共有しました。成功事例からも、通訳や議事録の重要性が明らかになりました。

そして第5章では、日本語力だけに頼らず、信頼できるパートナー選びと、オンライン会議や契約時の工夫、さらには「違いを前提に調整する」という姿勢が重要であることをお伝えしました。

結論として、日本企業が台湾の設計会社と良好な関係を築くには、「言葉」だけでなく「信頼」「誠意」「準備」の3本柱が不可欠です。

この3つを意識して取り組むことで、安心して台湾進出を成功に導くことができるでしょう。

上部へスクロール